高分子に通じる合成方法を用い、機能性ビルディングブロックを「数」、「組成」、「配列」、「空間配置」において分布なく集積する手法の開発は、ファインな分子機能の創製だけでなく、新しい物性の発見にもつながりうる。DNAやペプチドなどの生体高分子は、ビルディングブロックであるアミノ酸を逐次、縮合反応により連結していくため、デザインした「長さ」、「配列」を持つ生体高分子を合成することができる。本研究では、人工DNAをテンプレートとした異種金属イオンの集積プログラミングを行った。金属イオンのハード・ソフト、配置数、配置構造、電荷の違いを利用し、人工ヌクレオシドと金属イオンの結合特性を選択することができる。よって、DNAの合成手法を用いることにより、DNA二重鎖中に金属イオンの配列をプログラムすることができる。まず、ヒドロキシピリドン型ヌクレオシド(H)とピリジン型ヌクレオシド(P)を配列化した人工DNA二重鎖、d(GHPHC)_2を合成し、金属イオンの集積化を行った。吸収スペクトルやCDスペクトルによる滴定実験、マススペクトル測定によって、HがCu^<2+>イオンと平面四配位型H-Cu^<2+>-H塩基対を、またPがHg^<2+>と直線二配位構造P-Hg^<2+>-P塩基対を形成し、定量的かつ位置選択的に金属イオンアレイ(Cu^<2+>-Hg^<2+>-Cu^<2+>)を形成できることが明らかとなった。この方法論を拡張することにより、人工DNA内で5-10個の金属イオンの配列を自在に構築することができた。この方法は人工DNA鎖と金属イオンを水溶液中で混合するだけで、分子量、配列に分布を持たない、ディスクリートな集積型金属錯体を構築することが特徴であるので、金属錯体間の機能コミュニケーションを制御する場として、将来的な応用を目指す。
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