研究概要 |
本研究の目的は,同一飛行空間を複数回飛行させることで小型でありながら高分解能をえることが出来るマルチターン飛行時間型質量分析計を一段目として用い,広い質量範囲のスペクトルを同時に測定が可能なquadratic field ion mirrorを二段目に用いたタンデム飛行時間型質量分析計を開発することである.本年度は下記のような研究を行った. [1]Quadratic field ion mirrorの光学系の設計 イオン軌道シミュレーションプログラム「SIMION」を用いて,最低1[u]違いのフラグメントを分離可能な分解能をもつquadratic field ion mirrorの光学系の設計を行なった.高電圧の抵抗分割を容易にするため,電極間隔を変えることで双曲線場を実現する光学系を採用した. [2]マルチターンタンデム飛行時間型質量分析計の機械設計 既存の装置である「MULTUM II」をベースに高加速電圧(20kV以上)に対応可能なマルチターン飛行時間型質量分析計の機械設計と,quadratic field ion mirrorの機械設計を行なった.これまでの研究結果を踏まえ,容易に高精度を達成できる方式を検討し,採用した.また,周回部を高真空に保つことが可能なように,MULTUM部は2重Oリング方式の真空容器とした. [3]マルチターン飛行時間型質量分析計部の製作と性能評価 予算の関係上,まずマルチターン飛行時間型質量分析計部のみを順次製作し,その性能を既存の装置などを用いて評価した.最終的にMALDIイオン源を用いて,アンギオテンシンを300周回以上させることができ,同位体ピーク間を4μ秒以上引き離すことができることを実験で確認した.これにより,一本の同位体のみを選択することが可能となる.
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