研究概要 |
本研究の目的は,同一飛行空間を複数回飛行させることで小型でありながら高分解能をえることが出来るマルチターン飛行時間型質量分析計を一段目として用い,広い質量範囲のスペクトルを同時に測定が可能なquadratic field ion mirrorを二段目に用いたタンデム飛行時間型質量分析計を開発することである.本年度は下記のような研究を行った. 1.Quadratic field ion mirrorの製作 昨年度イオン光学系の設計を行ったquadratic field ion mirrorを製作し,昨年度製作し性能評価を行ったマルチターン飛行時間型質量分析計部との接続を行った.33枚の電極で構成され,広い質量範囲の測定が可能なように検出器に10cm×7cmの特注の大型のMCPを採用した. 2.タンデム飛行時間型質量分析計の性能評価 マルチターン飛行時間型質量分析計とquadratic field ion mirrorを組み合わせたシステムの性能評価を行った.既存の自作MALDIイオン源でアンギオテンシンIをイオン化し,マルチターン飛行時間型質量分析計でモノアイソトピックピークのみを選択し,衝突室でArガスターゲット衝突/解離させた後,quadratic field ion mirrorでプロダクトイオンの質量分析を行った.アンギオテンシンIのアミノ酸配列に相当するフラグメントイオンが全質量範囲について同時に十分な質量分解能で測定できた.また,高エネルギーCIDに特徴的なaとdシリーズが主であるスペクトルを得ることができた. 3.MALDIイオン源の設計 既存のMALDIイオン源は加速電圧が最大で8kVまでであり,十分な性能を発揮できないため,新たに20kV耐圧のMALDIイオン源の設計を行った.製作は次年度行う.
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