コンビナトリアルケミストリーの手法を取り入れた不斉触媒の探索研究では、目的の反応における化学収率(触媒活性)に加え、不斉収率を迅速に解析することが求められる。今年度は、まず固相不斉触媒と円二色性(CD)スペクトルによる解析を組み合わせることにより、様々な触媒的不斉反応の開発に適用可能なHigh Throughput Screening(HTS)の確立を目的として研究を行った。 新規に開発した解析システムでは、不斉触媒を構成している光学活性な分子は固相上に局在している。このため目的とする不斉反応を溶液中の基質に対して行う場合、反応溶液中の生成物に不斉が誘起されない限り、本液相に対する解析においてCDは検出されない。この原理に基づき、β-ナフトールの二量化による光学活性ビナフトールの合成をモデル反応として実験を行った。実際にポリスチレンに担持した固相不斉銅触媒を調製し、反応液を精製せずに直接CD検出器に導入する事で、極めて迅速に不斉触媒の力量を評価できることが明らかとなった。すなわち、目的化合物の単離、精製を行わないため、目的化合物の化学収率と不斉収率に関し定量的な値を得ることはできないが、触媒活性と不斉誘起能の相乗積として得られるCDスペクトルのピーク強度を比較することで、不斉触媒の真の有効性を迅速に相対評価できるというものである。また、反応液を精製することなく評価できるため、触媒反応の経時変化の追跡や反応の直接的な解析も可能となった。 現在、Lantern上での不斉配位子のライブラリー構築を行っている。
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