研究概要 |
本研究は超強力磁場勾配下での磁気共鳴を用いたナノイメージング法の開発と高分子機能傾斜材料への応用に関するものである. 平成16年度は動的ナノイメージング装置の完成および高分子傾斜機能材料の作製を目指し研究を行った.強力磁場勾配下で磁気共鳴を行う場合の第一の問題点は磁場強度のマッピングの問題である.本研究では,超演算子フーリエスペクトル法による核磁気共鳴スピンエコー減衰の数値シミュレーションにより,磁性粉体が発生する超高磁場勾配条件下での核スピンの振舞を調べる方法論を確立した.さらに,動的ナノイメージング装置のプロトタイプとなる高速(100ナノ秒程度)かつ高感度の磁気共鳴装置の作成を行った.現在のところナノイメージングの実現には至っていないが,5-30MHzの共鳴周波数をもつ磁気共鳴信号の観測を行っている. 次に,一軸温度勾配を用いた材料プロセッシングにより高分子傾斜材料の作製を試みた.まず,生分解性高分子であるポリ(ε-カプロラクトン)の物性改善を行うために,水素結合性のチオジフェノールとの二成分ブレンドを用いてロッド型高分子組成傾斜材料の作製に成功した.組成傾斜構造の確認を紫外吸収分光法や顕微フーリエ変換赤外吸収分光マッピング法に確認した.今後,動的ナノイメージング法により,非破壊で静的組成傾斜構造のみならず動的構造についても調べたい.さらに,結晶性パイ共役系高分子であるポリ(4-メチルチアゾール-2,5-ジイル)は300K付近に秩序無秩序型の相転移を起こし,300K以上で結晶相と準秩序相が共存することが分かった.この結果は分子パッキング構造の乱れに空間分布が生じていることを意味していて,一種の構造傾斜材料ということができる。
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