ホウ素上に金属配位基となるイミダゾリル基及び置換活性なアルコキシ基を有するアニオン性キレート配位子の無機酸化物担体上への固定化を検討した。シリカ表面のシラノール基とアルコキシ基の脱アルコール縮合では、ごく微量の配位子が担持されただけであった。そこでイミダゾリル基のメチル置換基と担体との立体障害を緩和することで配位子担持量を増加させることを目指して、末端にカルボン酸あるいはチオール基を有する有機基で修飾されたシリカとアニオン性キレート配位子どの連結を検討した。カルボン酸修飾シリカとアニオン性キレート配位子との反応では、カルボキシラト基のホウ素上への求核攻撃を経てアニオン性キレート配位子が連結された。この配位子固定化シリカにニッケルを作用させて得られたニッケル錯体固定化触媒について、アルデヒド共存下における分子状酸素を酸化剤とする液相オレフィンエポキシ化反応の活性を検討した。本触媒は、カルボン酸修飾シリカにニッケルを作用させて得られるニッケル担持触媒や、担体との連結を行っていないキレート配位子ニッケル錯体よりも高い活性を示した。 さらに担持固体触媒における活性点構造の制御を目的として、ペルオキソ錯体を前駆体とする担持触媒の開発を検討した。触媒前駆体となるタングステン及びモリブデン複核ペルオキソ錯体について、担持後の焼成による除去が可能なアンモニウムイオンを対カチオンとする錯体の合成を検討した。合成反応時の溶液酸性度を制御することで、目的とするペルオキソ錯体を選択的に合成することに成功した。さらにタングステン及びモリブデン錯体について単結晶X線回折法により構造解析に成功し、いずれの錯体においても複核構造を保ったまま、金属上に配位した水が解離した構造を有しており、無機酸化物への担持に際しても水の配位部位が担体との結合部位となり得ることが明らかになった。
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