SiC上III族窒化物結晶成長は、化学結合が異なるヘテロバレントな系であり、同時に、結晶のc軸方向の積層構造が異なるヘテロポリタイプな系でもある。本研究では、III族窒化物としてSiCと整合性の良いAlNに焦点を絞り、これまでに研究代表者により得られた知見を系統的に研究することで、現象のモデル化や体系化を進める。それにより、ヘテロバレント・ヘテロポリタイプ系における諸現象の理解と、光・電子デバイス応用のための、ヘテロ界面制御や高品質ヘテロエピタキシャル成長実現のための指針を確立する。 今年度は、SiC(0001)面上でのAlNの成長様式(高温成長・低温成長/レイヤーバイ・レイヤー成長・ステップフロー成長)が結晶性(結晶欠陥・格子緩和過程)にどのような影響を与えるかを系統的に調べた。成長温度を低温化することでレイヤー・バイ・レイヤー成長が長期にわたり持続することが分かった。また、低温成長は、高温成長に比べ、明確な結晶性向上が確認された。もう一つの取り組みとして、ポリタイプの違いの影響が如実に表れる4H-SiC(11-20)面へのAlNの成長に関して、ポリタイプがSiCからAlNへと引き継がれるメカニズムの解明に取り組んだ。成長時のV/III比を小さくした場合に限り、4H-SiC基板のポリタイプが引き継がれることを明らかにした。また、AlN成長層の残留歪みが、ポリタイプ引き継ぎの有無により大きく異なることをラマン散乱分光により解明した。ポリタイプ転写時にc面内での結合が密に行われることで、基板格子定数の影響を大きく受けて残留歪みに大きな差異が見られたものと推察される。
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