深紫外のレーザー光を得るためには、非線形結晶による和周波混合が通常用いられるが、20fsを切るパルス幅の領域では非線形結晶内での入射レーザー光と発生する紫外光との間の群速度の違いが大きく影響を与え、通常パルス幅は1ps程度まで広がってしまう。深紫外サブ20fs領域でのスペクトル位相の制御を行うためには、この問題を解決しなければならない。本年度の研究ではこの問題を解決するための基礎的な概念の提案と、その原理実証のための準備を行った。 和周波混合における群速度不整合は、2つのレーザー光を非平行に入射することである程度緩和されることが知られていたが、非平行パラメトリック増幅と同様な原理でこれを説明できることを理論的に明らかにした。和周波混合では超短パルスの入射光に角度分散を与えなければならず、この値を系統的に導き出した。 しかしながら、深紫外では可視域と比較して大幅に分散が大きく群速度整合条件を満たすだけではサブ20fsを切る様なスペクトル幅を確保する事ができない事がこの解析により明らかになり、さらに群速度分散と2次の角度分散の項まで考慮した位相整合条件を満たす必要性を示した。プリズムと望遠光学系の組み合わせによる具体的な実験配置を加味した理論計算を行い、これによって通常より20倍以上広いスペクトル幅の和周波混合が行える事を示した。 これらの計算に基づき、16fsのパルス幅を持つチタンサファイアレーザーの増幅システムを用いて実験を行った。この結果、入射したチタンサファイアレーザーのスペクトル幅全帯域に渡って波長変換が行われ、中心波長約256nm、スペクトル幅約10nm、パルスエネルギー20μJの深紫外光を得た。 また、本研究で用いたものと同様なチタンサファイアレーザーとガス媒質を用いた実験では、深紫外よりもさらに波長の短い軟X線領域でサブ10fSのパルス光を発生する事に成功した。
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