昨年度までの研究に於いて既に以下の様な結果を得ている。1.サブ20fsの超短パルスに必要なスペクトル帯域幅を深紫外領域で確保するための広帯域和周波混合の実証、及び、これに伴う高次角度分散の補償。2.角度分散補償を行った深紫外パルス光のチャープの測定と、その補償。チャープによって約3psに伸びていたパルス幅を約170fsまで圧縮した。3.基本波レーザー光の位相移行による、パルス幅の圧縮と制御。不要なスペクトル位相の歪みを基本波の位相制御によって取り除く事により、ほぼフーリエ限界に近い20fsの超短パルス深紫外光を得た。さらに基本波の位相に変調をかける事によって、深紫外光に変調をかけられる事も実証した。 本年度は、Xeの異なる2光子遷移準位すべてを含む様な、深紫外域にスペクトル幅をひろげるために、基本波光を発生するレーザーシステムの改良を行った。また、それと同時にさらに短波長域である、真空紫外~極端紫外光への位相制御を視野にいれて、これらの波長域の超短パルス光の光パルス特性の計測についての研究も行った。レーザーシステムについては、増幅器に用いる光学素子の開発を行った。チタンサファイアレーザーの利得狭窄化を補償する為の多層膜部分反射鏡を試作し、これによりQ-スイッチ動作出力で710nm~930nmに渡るスペクトル幅のパルス光を得た。真空紫外~極端紫外光のパルス光については、チタンサファイアレーザーをXeに集光して得られる高次高調波に対して、自己相関に基づく測定を行い、これによってパルス幅を決定する事に成功した。この計測は、2光子超閾イオン化を利用した、異なる次数の高調波間の位相差の決定という点で、特徴がある。また、2次の自己相関波形に重畳された電場干渉の縞の対称性を観測する事によって、高次高調波に固有の電場対称性を直接的に証明した。
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