研究概要 |
計画の前半である平成16年度では,以下の3点について研究を推進した. (1)全身行動の認識,記憶,想起を行う事のできる統計的情報処理系の構築 今までに開発した行動の見まね学習とシンボルの創発機構では,運動の関節角度情報に対する認知プロセスと再生プロセスの統合を行っているのみであった.これに多次元の情報を持ち,かつ複数のセンサ情報に関する認知・予測機能を扱えるような拡張を行った.統計的情報処理系の一つである隠れマルコフモデルを利用して,時系列パターンの認知・生成・予測を行うための数理的拡張を提案し,リアルタイムでの行動認識,センサ値の予測などを実現した. (2)人間との対話のための言語的思考プロセスを実現するモデルの構築 ヒューマノイドロボットが言語による人間からの指示を理解し,人間との自然な言語コミュニケーションを行うためには,人間と同様に質問や確認,提案などと言った,シナリオに沿った会話以外の対話機能が求められる.そのためにベイジアンネットワークを用いた,状況依存型の適応的対話分生成機能を構築した.これにより,人間から与えられた自然言語での指示が曖昧であっても,過去の履歴・文脈などを活用し,質問や提案などを交えた対話によって,目的のタスクを遂行できる枠組みを構築可能とした. (3)ポータブルモーションキャプチャシステムの導入による対話型教示システムの構築 日常生活空間での動作パターンや言語的対話戦略を発達させて行くためには,動作の教示が必要不可欠となるため,専用のスタジオや空間に束縛されないようなポータブルなモーションキャプチャシステムを導入した.これにより,屋外環境での動作教示も可能となり,居室や屋外環境などのような自然で複雑な環境での動作パターンとシンボルの対応関係の学習を可能とするシステム基盤を築いた.
|