平成17年度は、ナノ秒(5ns)パルスストリーマ放電の同軸円筒型ナノ秒パルスプラズマ反応容器内における進展を高速ゲート付ICCDカメラにより観測するとともに、ナノ秒パルスプラズマ反応容器へ窒素希釈の一酸化窒素(NO)及び窒素希釈のNOへ酸素と水蒸気を添加した混合ガスを模擬排ガスとして導入し、反応容器中へナノ秒パルスストリーマ放電を誘起することでナノ秒パルスプラズマの排ガス処理特性を把握した。更にナノ秒パルスプラズマからの発光を分光計測することで、放電プラズマ中へ存在する高速電子のエネルギーを見積もるとともに、放電中の気体温度を算出した。その詳細を以下に記す。 ナノ秒パルスストリーマ放電の進展過程は、高速ゲート付ICCDカメラの露光時間を200psとしたフレーミング撮影及び同露光時間を5nsとした積分撮影により観測された。その結果、ナノ秒パルスストリーマは同軸円筒型の反応容器中を内部電極から外部電極へ向け直進し、その進展においては球状のストリーマヘッドのみが発光していることが確認された。また、撮影像より算出されるナノ秒パルスストリーマの進展速度は、昨年度のストリークカメラによる観測結果と同様に6-8mm/nsであった。 また、ナノ秒パルスプラズマの排ガス処理特性としては、窒素希釈のNOを100%処理可能であり、かつ窒素希釈のNOへ酸素及び水蒸気を添加した模擬排ガスにおいて、ナノ秒パルスプラズマが100nsパルスプラズマよりも高効率にNOを処理できることを確認した。 更に、ナノ秒パルスプラズマより輻射される放電発光を分光計測した結果、窒素分子の2nd Positive Bandからの発光が観測され、この発光を誘起するために必要な最低エネルギーが12eVであることからナノ秒パルスプラズマ中へ存在する高速電子の有するエネルギーが12eV以上であることが確認された。また、窒素分子の回転温度毎の発光スペクトルを導出するプログラムを作成し、その導出スペクトルと分光計測結果とを比較することで、ナノ秒プラズマ中の気体温度が300K(室温)であることが確認された。この結果は、ナノ秒パルスプラズマ中では気体の加熱へ使用されるエネルギーがほぼゼロであることの証明となる。
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