本研究の最終目標は、室温強磁性半導体と有機材料を融合した透明スピントロニクスの実現である。デバイスの実際の作製に加えて、まだ歴史が浅いCoドープTiO_2の強磁性発現機構の理解も必要である。そこで、今年度は以下の研究を行った。 (1)室温強磁性体CoドープTiO_2(ルチル)薄膜の膜質の向上と強磁性の発現機構の理解。 (2)有機デバイスの作製プロセスとその光学評価を行うための、実験設備の立ち上げ。 (1)では、薄膜を高品質に保ったまま酸素欠損量を変えることにより、薄膜中の電子キャリア濃度を系統的に制御することに成功していたが(今年度4月のNature Materials誌に発表し、同誌のNews & ViewsおよびMaterials Today6月号に紹介)、さらに、磁化、磁気光学効果、異常ホール効果が電子キャリア濃度に対して系統的に変化することを実験的に証明した。これは、CoドープTiO_2がキャリア誘起強磁性を示す強磁性半導体であることを示す強い結果であるといえる。また、CoドープTiO_2薄膜の強磁性が膜厚に強く依存することを見出した。これは強磁性の発現機構に関わる可能性があり、有機デバイス作製の際にも重要な因子となることが予想される。そして、Semiconductor Science and Technology誌に招待論文を発表した。(2005年3月現在、論文1報投稿中、論文1報準備中) (2)では、以下の立ち上げを行った。 ・有機EL素子(ポリマー、低分子材料)等を作製するための水分と酸素フリーのグローブボックス ・有機EL素子等の光学特性(吸収スペクトル、発光スペクトル、輝度)のCCDマルチチャネル分光器を用いた高速測定システム
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