本年度は、超高清浄有機ELデバイス製造用プラズマ装置の開発を重点的に行った。1m角を超える超大型矩形基板に対応したマイクロ波プラズマ励起技術を世界に先駆けて開発した。従来のプラズマ励起技術では、大型基板上に均一にプラズマを励起することができなかった。特にプロセスに多用する多原子分子のガスを用いてプラズマを励起すると、投入したマイクロ波のエネルギがガスの乖離に使われるためプラズマの安定性や均一性が損なわれるという重大な問題があった。本研究で開発したマイクロ波プラズマ励起技術を用いれば、極めて高効率にプラズマが励起されるため、どんなガスを用いても広い圧力範囲で安定、かつ均一なプラズマが得られ、様々なプロセスに柔軟に対応できるようになった。マイクロ波プラズマの特徴である低電子温度、高密度、高制御性という利点も兼ね備えており、有機ELの製造装置としては革新的なプラズマ装置が実現された。この技術を用いた2段シャワープレートマイクロ波プラズマCVDチャンバを設計、製作し、装置性能の検証後、プロセスの開発を進めた。有機ELデバイスは水分等の不純物の混入に極めて弱く、保護膜が非常に重要である。現状技術では、膜質が粗悪なため厚い保護膜(2μm以上)が必要で生産性に問題がある。それでも保護膜としての性能が不十分なため、金属やガラスのキャップをパネル背面に接着して乾燥剤とともに封入する構造になっており、パネルの薄型化と放熱性を阻害している。本研究では、2段シャワープレート構造マイクロ波励起高密度プラズマ技術を用いて、CVD法により70nm程度の薄膜でも不純物の透過が全く無く、ピンホール・ボイドが一切存在しないSi_3N_4保護膜を室温で形成する技術を開発した。
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