研究概要 |
本年度はSiやGeをホスト材料とする強磁性半導体の成長とその物性評価と,これらを応用したスピンデバイスであるスピンMOSFETの理論解析を行った. 強磁性半導体は高いスピン分極率や電界効果磁性制御といった機能を有していることから、スピンデバイスへの応用上極めて有用な材料である.強磁性半導体はこれまで化合物半導体を中心に研究がなされてきたが,集積エレクトロニクスの中心であるSiテクノロジーに整合するものはこれまでにほとんど報告されていなかった.本研究課題ではSi, SiGe, GeといったSi系半導体をホスト材料として強磁性半導体を実現することを目標としている.SiにMnを高濃度にドープした構造は世界的にも注目を集めていたが,本研究課題ではこの構造のエピタキシャル成長を世界ではじめて実現した.Si_<1-x>Mn_xでは20%程度まで高濃度にMnをドープすると強磁性を示すことなどがわかった.また,Ge_<1-x>Mn_xに関してもエピタキシャル成長を実現し,磁気光学効果の測定から,その強磁性の起源を明らかにした.今後は,デバイス応用可能な高品質の強磁性半導体の創製および強磁性半導体を用いたスピン制御に向けて研究を展開する. また,本年度は強磁性半導体をチャネルに用いたMOSFET型スピントランジスタであるスピンMOSFETの理論解析を行った.強磁性体をチャネルに用いることによって,バイアスにほとんど依存しない大きな磁気電流比が得られることなどを理論予測した.また,このスピンMOSFETは大きな電流駆動能力や小さなオフ電流を有し,集積回路に適した性能を有することを示した.
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