研究概要 |
強磁性半導体は高いスピン分極率や電界効果磁性制御といった機能を有していることから、スピンデバイスへの応用上極めて有用な材料である.強磁性半導体はこれまで化合物半導体を中心に研究がなされてきたが,集積エレクトロニクスの中心であるSiテクノロジーに整合するものはこれまでにほとんど報告されていなかった.本研究課題ではSi,GeといったIV族半導体をホスト材料として強磁性半導体を実現することを目標としている. 近年,Mnを高濃度ドープしたGeのエピタキシャル薄膜(Ge_<1-x>Mn_x)が強磁性を示し,これが強磁性半導体である可能性が指摘されている.しかし,その強磁性の詳細については理解されていなかった。本研究ではGe_<1-x>Mn_xエピタキシャル薄膜の微視的な構造および構造電子構造の評価から,Ge_<1-x>Mn_xの強磁性の起源がエピタキシャル成長中に生じる高濃度にMnを含むアモルファスのGe_<1-y>Mn_yナノクラスターにあることを明らかにした.次いで,均一にMnの分散したアモルファスのGe_<1-x>Mn_x薄膜を実現し,この磁気光学効果,磁気伝導特性から,これがintrinsicな強磁性半導体であることをはじめて明らかにした. また,Siをホスト材料とする強磁性半導体の実現に向けて,Si中にMn,Cr,Feを高濃度にドープした場合のエピタキシャル成長過程を詳細に調べ,これらの遷移金属の濃度とエピタキシャル成長が実現できる成長温度との関係(相図)を明らかにした.
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