本研究の目的は、次世代のフォトニックネットワークにおける基本的なパケット転送処理を並列処理のアプローチから全光で行う技術を実現することである。パケットは、信号の行き先を指定するアドレス(ラベル)と信号部分であるペイロードから構成される。具体的には、超高速パケット転送のために必要なラベル認識、経路スイッチング、信号再生を統合した超高速全光パケットルーティング処理の並列処理アーキテクチャによる実現を目指している。最終年度である本年度は、研究成果をまとめるにあたり、処理機能の品質評価を中心に下記の項目に対して検討を行った。 1)経路スイッチング機能 これまで研究を行ってきた超高速光アナログ/ディジタル変換の構成要素であるファイバ内の自己周波数シフトを用いた光マルチ閾値処理を中心に実際の光通信で用いられる10Gbpsの信号を用いた品質評価を行った。その結果、非常に開口のクリアに開いたアイパターンが得られ、処理の品質の高さを確認した。さらに、ビットエラーレートを計測することにより、最終的にエラーフリーの実験結果を得ることに成功した。 2)パケット信号再生機能 空間フィルタリングを用いた光符号化処理を中心に検討を行った。入力信号に応じて符号を付け替える符号変換機能の基本機能を検討した。基本実験として、入力信号(元信号)を認識し、その信号に対応した出力強度(新しい符号)に変換する実験を行い、良好な結果を得た。 3)ラベル抽出処理機能 ラベル認識技術を応用した信号処理による抽出と超高速スイッチングによる抽出を運用する際に信号を一時待機させることが必要であることを念頭に、光バッファメモリの検討を進めた。その結果、時空間変換を用いた方法により、2ピコ秒間隔のビット信号の超高速記録が可能であることを実験的に確認した。
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