研究課題
現在の設計体系でRC部材のせん断耐力を向上させるためには、帯鉄筋やスターラップなどのせん断補強鉄筋を十分に配置する必要があるが、その配置量は著しく多く、鉄筋の組立作業やコンクリートの打設・充填作業にも支障をきたす場合があり、コンクリートの打設不良による初期欠陥を生ずるリスクが高くなっている。そこで、形状加工を施した板状装置(面材)を部材軸方向に配置して埋め込むことにより、コンクリート内に局所すべりの誘発と拘束を断続的に発生させることで変形・損傷の離散化を実現し、破壊の局所化現象としての貫通斜めせん断ひび割れの発生を制御して、面内の広範な領域のコンクリートの潜在的な性能をせん断耐荷機構に組み入れる新たな機構を開発した。本研究では、まず、新たに開発したRCのひび割れ経路依存性を利用したせん断耐荷装置(開発名称:SCID)によるせん断耐荷機構の解明を目指すと共に、最適な装置構造と機構の検討を行う。また、設計に用いるせん断耐力評価式を構築し、SCIDを用いた部材の簡易設計手法の確立を目指す。本年度は、SCIDの効果の寸法依存性と正負交番載荷の影響等をチェックする目的で、断面400mm×400mmの中型の梁供試体5本に、柱への展開を意図して、まず4方向から降伏変位1δyの載荷を行ったのちに、特定の載荷面へ5δyまでの交番載荷や、終局変位までの片振り載荷を行った。その結果、SCIDを用いない通常の梁部材でも、予め載荷直交方向の面から降伏変位に相当する先行ひび割れが導入されていることにより、斜めせん断ひび割れの進展が抑制されて、部材靭性が飛躍的に向上することが判明した。また、設計上最低限必要となる最小せん断補強鉄筋量を配置したSCID設置供試体の実験では、最低量のせん断補強筋とSCIDとの併用効果により、複数のSCID形状で、顕著な部材靭性の向上が確認された。
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生産研究 第57巻第2号
ページ: 107-110
コンクリート工学年次論文集 Vol.26,No.2
ページ: 949-954