研究計画に従い、以下の各項目別に研究を推進した。 1.微生物由来の揮発性有機化合物MVOCの測定(継続) 平成17年度までに実施した5種の真菌に加え、新たにCladosporium cladosporioides(NBRC6348)を追加して、ガラスプレート上にPDAにて養分を再現し、MVOC放散量の測定を実施した。特に温度依存性、湿度依存性に加え、胞子からコロニー形成までを対象とした成長段階別のMVOC放散量測定を実施し、各フェーズにてMVOC放散量ならびに成分が大きく異なることを確認した。 2.微生物発育速度の測定とロジスティック成長モデルの提案 平成17年度に引き続き、胞子濃度を制御した状態での1次成長としての菌糸成長の測定を行うと共に、目視可能なサイズからコロニー形成が進行する2次成長を対象としてコロニーサイズの測定を実施した。1次成長データならびに2次成長データを統合して表現する真菌成長モデルとして胞子密度依存型ロジスティック方程式に着目し、雰囲気条件をパラメータとして組み込んだ、発芽からコロニー形成までの成長を予測可能なロジスティックモデルを提案した。 3.総合的なIEQ予測・評価法の提案 汎用型流体解析ソフトを用いた室内流れ場・温度場・湿度場・化学物質濃度分布の連成予測手法に、上記2.で提案したロジスティック型真菌発育モデルを組み込み、室内微生物環境予測を可能とする総合的な室内環境(IEQ)予測手法のプロトタイプを提案した。特に室内での高湿度が問題となりうる浴室条件を対象として、浴室内の換気方式を変化させた場合の温度分布、湿度分布予測を行うと共に、外気由来の真菌胞子を対象として浴室内の移流拡散減少、ならびに壁面付着量を予測し、真菌増殖予測に関する感度解析を実施した。
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