今年度は、二重屋根採冷システムと調湿・躯体蓄冷との複合による室内熱環境の調整効果を定量的に明らかにするために、試験家屋を用いた実験を行なった。 試験家屋は、昨年度と同じものを東京都立川市に移設して実験に使用した。特に、調湿のために、壁の内表面には3〜5mmの珪藻土を塗布し、外気予冷用中空層には乾燥状態の珪藻土チップ約130kgを詰め込んだ園芸用孔開きチューブ8本を設置した。躯体蓄冷のために夜間換気用のファンをタイマーで毎日20:00〜翌6:00に稼動させるとともに、蒸発冷却用のために2時間おきに4分ずつ2〜4L/minを天井に散水し、日射遮蔽のために南側ガラス戸の前には葦簾を設置した。 夏季に室内熱環境調整の実験を行なった結果、以下のことが明らかになった。 1)外気温が36℃に達しても、室温・周壁平均温度はともに30℃以下に抑えられる。このことから、二重屋根採冷システムは日射遮蔽と躯体蓄冷との複合により室温・MRTを良好な範囲に調整することが十分可能であると考えられる。 2)室内外の絶対湿度差(室内絶対湿度-外気絶対湿度)は、「珪藻土なし」の実験ではベニヤ板による吸湿で-1.8〜0g/kg'であったのに対して、「珪藻土あり」の実験では壁・外気予冷用中空層の珪藻土の吸湿と置き屋根カラー鉄板での結露とにより、-7.8〜0g/kg'になっており、「珪藻土あり」の方が「珪藻土なし」に比べて除湿量の多いことが確認できた。 3)室空気からの除去熱量は、天井から最大で80W、周壁(壁・床)から最大で120W、夜間換気で最大120Wである。日射遮蔽・天井散水・躯体蓄冷・夜間換気のいずれも欠くことなく複合させることによって、涼房効果が引き出されることが確認できた。
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