本年度は日本の精神病院を訪問し、病室を中心に精神疾患患者がどのような療養環境で生活しているかを調査した。それに加え、精神疾患患者に限らず一般的な患者が療養環境の違いによってどのような生理的、心理的影響を受けるのかを調べるため、日本医科大学医療管理学教室ならびに心理学教室と共同で模擬病室を用いた実験的研究を行った。 実験は4床室に見立てた模擬病室にベッド代わりの台を壁に対して平行配置した状態と、近年病院で増えつつある斜めに配置した状態を準備し、被験者(男子学生34名、女子学生18名)に双方について15分間横になってもらった。それぞれの場合の前後において血液検査(男子6名、女子6名のみ)、心理検査(全員)、生理検査(全員)を行い、それらの数値がどのように変化したかを調査した。実験終了後にアンケート調査(全員)も実施し、被験者のコメントを採取した。 その結果、アンケート調査から斜めの状態に配置されたベッドに対して不快感を訴える被験者がいたことが分かり、また生理検査と心理検査の数値が若干ではあるが斜めのベッドに対して否定的な結果を示した。今回の実験は極めて短時間であったことや、被験者が健康な若年者であるといった特殊な状況であったことは否めないが、通常と異なる斜めのベッド配置は、体力を消耗している病院の患者や精神的に不安定な精神疾患患者に対しても何らかの負の影響を及ぼす可能性が示唆されたと言えよう。
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