申請者はPLD法ではレーザー光線の照射によりターゲット表面から発生するプルームがプラズマ状態にあることに注目し、このプラズマを磁界によって基板付近に集めれば『自発的アシスト』効果が得られるのではないかと考えた(オーロラPLD法)。この手法を強誘電体薄膜と強磁性体薄膜を積層させた積層薄膜の作製時に用いることにより、新しい強誘電体/強磁性体メモリの機能が実現できるのではないかと考えるに至った。 平成16年度は (1)最高磁場430GのダイナミックオーロラPLDチャンバーでNiOおよびニッケル亜鉛フェライト薄膜の結晶化や特性におよぼす磁場印加効果を調査すること (2)2000Gの最高磁場を実現するための新しい『ダイナミックオーロラPLD装置』の試作行うための準備を完了させた。 NiO薄膜についてはMgO基板上に室温という低温でエピタキシャル成長させることに成功したが、このような低温結晶化に対しては酸素圧力が大きく作用し、20mtorrの場合に結晶性が極端に高くなることを見いだした。15mtorrおよび30mtorrでは結晶性が低いことが見いだされた。このことは低温エピタキシャル成長が生じるためには気相の平均自由行程や運動エネルギーが鍵であることを示唆する。また、結晶性は印加させた磁場が大きいほど強くなることが明らかになった。ニッケル亜鉛フェライト薄膜については、成膜中の磁場印加により、印加しない場合より約200℃ほど低温で結晶化し、かつ、バルクに匹敵する飽和磁化が得られることを明らかにした。また、磁場印加効果が生じる条件を検討するため、種々の物質に対してオーロラPLDの効果の有無を調査した。
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