Ti-Al金属間化合物の逆位相領域(APD)組織と層状組織を同時に制御し、層状組織制御のみでは得られない特性を実現するための研究を行ってきた。昨年度の研究の結果、熱処理のみで組織制御した場合、γ板析出前にAPDが粗大化するため、層状組織と共存するAPDのサイズは最小で400nmであった。また、APDとγ板の組織複合化の効果を引き出すには、従来の不規則α単相温度からの急冷とその後のα_2+γ二相温度での等焼鈍で得られるより微細なγ板・APD複合ナノ組織が必要であることが示された。本年度は、そのような組織を得るため、γ板の優先核生成サイトとしての転位の役割に注目し、二相化焼鈍前の塑性加工の効果を調べた。具体的には、焼鈍前に圧延あるいは押し込み加工により塑性変形を加えることで優先核生成サイトとなる転位を導入してγ板析出を促進し、昨年度得られたよりも微細なγ板・逆位相領域・転位複合ナノ組織を得ることを試みた。 焼鈍前に10%圧延加工した結果、加工なしの場合にはγ板が析出しない条件(1073K 1×10^4s)での焼鈍でも平均間隔(L)88nmの層状組織が得られた。その際の平均APDサイズ(1)は214nnと微細であり、これまでで最も微細な複合ナノ組織が得ることができた。そのような組織を有する結晶の硬さはHV464と、熱処理のみで得られた同程度のL(94nm)を有する結晶の硬さHV366に比べて大幅に向上していた。また、10%圧延後1073Kで5×10^4s焼鈍した試料では、L=49nmとなった。これは、焼鈍前加工なしでさらに長時間焼鈍て得られる最小の五の約1/2であったことから、焼鈍前加工はγ板析出の早期化だけでなく、層状組織をさらに微細にする効果も有することを見出した。押し込み加工によりさらに大きな加工を加えた場合にはL=77nm、1=90nmと共に100nm以下の組織も得られた。
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