本研究は、ヘリカル型高温プラズマ閉じ込め装置CHSにおいて、高速イオン励起MHD不安定性が高速イオン輸送並びに閉じ込めについて調べることを目的としている。平成16年度においては、本研究を遂行するために必要なファラデーカップに基づく高速イオンプローブの設計・製作に加えて、このプロープから出力される高速イオン信号を処理する為の回路系並びにデータ取得システムの構築を行った。今年度開発した本プローブの動作原理を以下に簡単に記す。高速イオン電流を測定する為のイオンコレクタ(金属板)をステンレス製の箱内に周囲と絶縁した形で設置し、箱の側壁の一つに、前段を狭く、後段を広くした二段のアパチャーを、イオンコレクタ板より少し高さをずらした位置に設けた。二段のアパチャーの中心を通る直線は、イオンコレクタ板面と平行である。これにより大きなラーマー半径を持つイオン、即ち高速イオンのみがアパチャーを通過し検出器内に入ることを可能とした。大きいラーマー半径を持つイオンは、小さなそれを持つイオンより、アパチャーからより遠い位置に衝突し、また衝突位置のアパチャー中心線から垂直方向へのずれは損失イオンのピッチ角に対応する。本プローブでは、イオンコレクタ板を6分割することにより、プローブにエネルギー並びにピッチ角分解能を持たせた。また、中性粒子入射高速イオンの損失位置の空間分布を把握する目的で、減速並びにピッチ角散乱を考慮した粒子シミュレーションを行った。減速・ピッチ角散乱を受けてリップル損失する高速イオンは、ヘリカルリップルに捕捉され大半径方向内側に損失することが分かった。この結果について、第46回米国物理学会プラズマ物理分科会(2004.11.15-19)にて発表を行った。
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