本研究課題の最終目標は、蛋白質1分子の向きがxy方向に変化する時の情報を、ミリ秒という高い時間分解能で画像化することである。この技術を分子モーターや蛋白質分解酵素などの特徴的な機能を持つ蛋白質に応用することで、蛋白質の普遍的な動作原理の解明を目指している。 そのために、(1)試料(生体分子)の調製、(2)顕微鏡の開発、という2つの側面から研究を進めている。 (1)他の外部予算で購入した、生物試料の精製を行うための機器類(液体クロマトグラフィー、オートクレープ、大腸菌の培養器等)により、アミノ酸を変異した回転分子モーターの精製を行った。変異した箇所に蛍光色素をラベルして実際に1分子レベルでの観察を行い、色素の角度を通じて蛋白質の2次元的な方向を決定することに成功した。 (2-1)本申請課題で開発している新しい光学系の基本概念について、特許申請した。これに加えて、従来の顕微鏡ではなし得なかった、粒子の3次元の方向を同時に検出する技術を考案し(特許申請準備中)、実際に作製することにも成功した。 (2-2)オンチップcharge multiplier CCD回路を搭載したCCDカメラの製品は、現在世界で4社から発売されているが、そのうちの3社の製品について評価を行った。この回路は、受け取った電荷を素子の後ろで増幅する特徴を持ち、ミリ秒で強い信号が加わっても受像面でのダメージはおきないため、本研究課題の要となる装置である。信号のS/Nと装置の安定性、時間分解能を総合的に評価して、Andor社のiXonを購入した。 また、他の研究機関との交流も積極的に行っている。本研究室で独自に開発している顕微鏡を用いて試料を観察する目的で、熊本大学の小椋光教授、大阪市立大の宮田真人助教授、東工大の元島助手、理研の佐藤健氏らと共同研究を進めている。
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