本研究は以下3つの独立した機能解析系により染色体構造変換機能を把握した。 1.ヒト核内レセプターを用いた新規転写共役因子の分子遺伝学的探索.ARおよびERα発現ショウジョウバエを用いた転写共役因子群の分子遺伝学的な探索は転写活性能の変動を指標に約1500系統の遺伝子変異体を解析中、転写機構に相互作用する12系統単離した。単離した12系統中、核内レセプター転写活性能が抑制される新規変異体を2系統同定した。この遺伝子変異は新規遺伝子であり、ヒストン修飾及びクロマチンリモデリング活性を有すると示唆されるドメインがコードされていた。一方、生化学的な機能解析も必須と考え、これら2つのヒトホモログ遺伝子を単離し、動物培養細胞系にて再現性を確認した。更にこれら因子の複合体を精製し、構成因子の同定を試み、生物学的意義を解きたいと考えている。2.染色体構造変換を介した転写共役因子の機能解析系の構築.研究計画1での取得因子の機能解明として染色体構造状態を個体レベルで解析(PEV解析)を行った。その結果、取得因子が染色体構造調節し、ヘテロクロマチン誘導を司る因子であることが判明した。レポーター遺伝子のクロマチン再構築を確立かつ核内レセプターおよびヒストンの再構築タンパクを大量精製済みであり、クロマチン再構築したレポーター遺伝子からのin vitro転写系を検討している。3.ショウジョウバエエクダイソン依存的な染色体構造変換機構の解析.変態・脱皮ホルモンのエクダイソンは唾液腺染色体上にパフを誘導する。パフに局在する因子を探索した結果、候補遺伝子を2系統単離した。これら因子はヒストンシャペロン因子であることが判明し、エクダイソン依存的なクロマチン構造変換に重要であることを見出した。
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