本研究は、温度ストレスに対する生理反応、特に末梢部血管運動反応から、環境適応能の多型性について解明すること、同時に体温調節反応における多型性と潜在性について検討することを目的として、実施した。 20〜30歳代の男子大学性10名を対象とし、寒冷ストレス実験、運動能力試験、生活行動調査、食習慣および栄養摂取量調査、生活環境調査を実施した。各々の測定・実験の詳細は以下の通りである。 寒冷ストレス実験:Tシャツと短パンを着用し、28℃で60分の安静後、室温10℃、湿度40%RHの人工気候室で90分間の寒冷曝露を実施した。実験中の皮膚温、直腸温、血圧・心電図、血流量、代謝量、末梢血管幅の測定を行った。 運動能力試験:室温20〜25℃、湿度40%RHの人工気候室にて自転車エルゴメータによる漸増負荷運度を疲労困憊まで実施し、その後8分間の軽運動とサドル上での8分間の椅座位安静を実施した。運動前から実験終了時までの直腸温、心電図測定及び酸素摂取量、二酸化炭素排出量、換気量を計測した。また、運動中には主観的疲労感も測定した。疲労困憊時の酸素摂取量から最大酸素摂取量および無酸素性作業閾値を測定し、持久的運動能力の指標とした。 生活行動調査:各被験者の生活時間および運動、エアコンへの曝露状況に関するアンケート調査を実施した。また、活動記録計を用いて日常活動量の測定を連続3日間行った。 食習慣および栄養摂取量調査:自記式アンケートによって食事の摂取状況や調達方法などに関する食習慣と簡易食事摂取調査票による蛋白質、脂質、糖質摂取量を調査した。 生活環境調査:被験者の生活環境における温度、湿度、照度の測定を小型データロガーを用いて行った。 現在、以上の実験結果から、寒冷時の体温調節反応、特に手指部の血管収縮、代謝の亢進という観点から多型性の検討を行い、さらに運動、食事、環境要因から多型の原因の解明を進めている。
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