全身寒冷曝露実験を行った平成16年度の結果、末梢部(特に手指部)の体温調節反応(血管収縮反応)と持久的運動能力の間の関係性が示唆された。この結果を受けて平成17年度は手指部の体温調節反応に着目し、以下の2つの実験を行った。 実験1:男子大学生39名を対象に、局所耐寒性(寒冷誘発血管拡張反応)検査および血管内皮機能検査・持久的運動能力検査を実施した。血管内皮機能検査は、マーキュリーストレンゲージプレスティモグラフィを用いて行った。具体的には左上腕に50mmHgカフ圧を90秒間かけているときの左前腕の動脈流入量の変化からmaximum venous outflow(MVO)を測定し前腕のCapacityの指標とし、さらに左上腕に200mmHgのカフ圧を5分間かけた後の左前腕の動脈流入量がベースライン値に戻るまでの時間を測定し、血管硬化の指標とした。局所耐寒性検査は、0℃の氷水に右第2指を第2関節まで30分間浸水し、その前後も含めた右第2指の指腹部の皮膚血流量と皮膚温の変化から寒冷誘発血管拡張反応を測定した。持久的運動能力検査は自転車エルゴメーターを用い、漸増負荷運動中の呼気ガス分析(ブレス・バイ・ブレス)から最大酸素摂取量および無酸素性作業閾値を計測し、持久的運動能力の指標とした。これらの実験から寒冷誘発血管拡張、血管内皮機能、持久的運動能力の3者の関係を検討した。 実験2:男子大学生10名を対象に、短期間の氷水に手部を浸す負荷(氷水負荷トレーニング)を3日間(30分×2回/日)行い、この氷水負荷トレーニング前後に局所耐寒性(寒冷誘発血管拡張反応)検査を実施した。また、実験1と同様、血管内皮機能検査・持久的運動能力検査を実施し、これらの値が、氷水負荷トレーニング前後の値の変化にどのように影響を及ぼすかについて検討を行った。
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