研究概要 |
今年度では、ベイト供試植物を利用した土壌病害の診断について、病害診断の主幹となる土壌病原体の直接的検出法について検討した。設定圃場として、水田土壌およびイチゴ栽培ビニール温室土壌、検出方法としては、分子生物学的一手法であるPCR-RFLP法および化学分類学的一手法であるFAME法を用い、ベイト植物14科20種を供試し、代表的な土壌伝染性植物病原菌の一種である、Rhizoctonia属菌について、簡易的かつ効率的な土壌からの直接検出法の検討を行った。ベイトトラップ法の応用研究から、以下の成果が得られた。 (1)水田土壌では植物ベイティング法により、病原体であるR.solani AG 1 IA, R.solani AG 2 2 IIIB, R.oryzae, R.oryzae-sativae菌の土壌からの直接検出と比較して、10-20倍の高いベイティング法の検出効果が示された。特に、PCR-RFLP法では、ベイト植物に、イネ、イグサおよびソバにおいて土壌からの、Rhizoctonia属菌の高頻度の検出効果が得られた。特に、rDNA ITS領域のPCR増幅により、混合汚染土壌からの効率的なRhizoctonia属菌の検出を可能とした。またFAME法については、アシ、イネ、セイタカワダチソウ等のベイト植物で、Rhizoctonia属菌特有のオレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸の検出および脂肪酸組成比の統計学的解析により、高頻度の検出効果が得られた。脂肪酸の種類と脂肪酸組成比の統計学的解析を行うことにより、混合汚染土壌からの、Rhizoctonia属菌の直接的検出を可能にした。 (2)イチゴビニール温室栽培土壌については、ワタ、ユーカリ、ケナフ等のベイト植物でR.fragariae, R.solaniの高頻度の検出効果が得られた。特に、PCR-RFLP解析ではベイト供試植物の使用により、土壌からの直接検出と比較して5-10倍の効果が得られた。FAME解析では、R.fragariae特有の脂肪酸の検出には成功したが、脂肪酸組成比に基づく統計学的解析からは有効な検出は認められなかった。これらの成果に基づき、土壌病害診断の効率的かつ容易な診断法の基礎的知見にするとともに、植物由来の抗菌成分や殺菌成分を含有するベイト植物を利用した、土壌病害防除法の開発を行う予定である。
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