研究概要 |
通性嫌気性菌であるLactobacillus属乳酸菌を用いる機能性脂肪酸・共役リノール酸の生産プロセスを確立した。本プロセスでは見かけ上、リノール酸分子内の二重結合が異性化をうけ共役二重結合が生成するが、この過程には水和反応、脱水反応、異性化反応などの複数の反応が関与していることを明らかにした。その酵素系の解明を試みた結果、酵素系を構成する蛋白質群が可溶性画分と膜画分にまたがって存在していること、モリブデン酸、バナジン酸、タングステン酸などの金属酸化物により活性化を受けること、NADPHもしくはNADHとFADといった酸化還元補酵素を必要とすることなどが明らかとなった。また、偏性嫌気性菌の脂肪酸代謝に関する基礎的検討を行い、Megasphaera、Clostridium、Propionibacterium、Bifidobacterium属などの偏性嫌気性細菌が、リノール酸を添加した栄養培地での嫌気的培養において、高い変換率でリノール酸をtrans-11-octadecaenoic acidへと変換することを見いだした。これらの菌株を対象に、高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸、エイコサペンタエン酸の変換反応を検討した結果、Clostridium bifermentansがアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を新規脂肪酸へと変換することを見いだした。これら新規脂肪酸の構造解析を試みたところ、ともに分子内の複数の二重結合のうち、いずれか1つが飽和化された脂肪酸であることが判明した。 また、パン酵母の嫌気的糖代謝の応用開発を行い、高濃度の無機リン酸存在下にて蓄積するフルクトース1,6-2リン酸を、大腸菌の解糖系ならびに大腸菌に高発現させたデオキシリボアルドラーゼにより、有用糖リン酸であるデオキシリボース5-リン酸へと変換するプロセスを開発した。
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