鹿児島大学において樹立・維持されているクラウン系ミニブタにおける効率的な体細胞クローン動物作出システムの確立を目的として種々の実験を行い、以下の知見を得た。 1、レシピエント卵における卵丘細胞の除去から作製したクローン胚の活性化までにかかる時間は、クローン胚の体外発生に影響しないことが示された。また、レシピエント卵の除核からドナー細胞の融合までの時間も、クローン胚の体外発生に影響しないことが示された。 2、腎臓あるいは皮膚に由来する培養細胞をドナーとしてクローン胚を作製した結果、いずれの細胞を使用した場合にも高率(23.5-24.8%)に胚盤胞にまで体外発生することが示された。腎臓由来細胞をドナーとして作製された624個のクローン胚を4頭の仮親に移植した結果、胎子は得られなかった。一方、皮膚由来細胞をドナーとして作製された868個のクローン胚を5頭の仮親に移植した結果、1頭の妊娠が115日目まで継続し、帝王切開によって妊娠末期の胎子が1頭得られた。この胎子は帝王切開時に死亡していたが、形態学的な異常は見られなかった。 3、従来、ブタ体細胞クローン胚の活性化には直流電気パルスを印加する電気活性化法が用いられてきたが、超音波を照射することによっても同様の活性化を誘起し得ることを明らかにした。超音波照射によって活性化したクローン胚の胚盤胞形成率は電気活性化法による値と差がなかったが、得られた胚盤胞の細胞数は有意に増加した。この結果から、超音波照射法により活性化されたクローン胚の質は電気活性化法を用いた場合よりも高いことが示唆され、これらの胚を仮親に移植することにより、クローン動物の作出率を改善し得ると考えられた。そこで、皮膚由来細胞をドナーとして作製された349個のクローン胚を超音波照射法により活性化した後に2頭の仮親に移植した結果、2頭とも妊娠が成立したので、現在経過を観察中である。
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