体細胞クローン動物の作出率に影響を及ぼす要因の一つとして、活性化処理の方法があげられる。これまでブタにおいては直流パルスを印加する電気活性化法が主流であったが、我々は前年度の研究において超音波の照射による新しい方法を開発した。本年度は、ミニブタ体細胞核移植における超音波活性化法を最適化するために、超音波のduty比が活性化後の体外発生に及ぼす影響について検討した。さらに、最適化された方法を用いて活性化されたミニブタ体細胞クローン胚を仮親に移植して産子への発生能について調べた。 ブタ体外成熟卵子の活性化においては、duty比20-30%の超音波が適していた。一方、クラウン系ミニブタ体細胞クローン胚の活性化においては、duty比10%の超音波が適していた。クローン胚にduty比10%の超音波を照射あるいは直流パルスを印加した結果、体外発生状況に差はみられなかった。duty比10%の超音波により活性化したクローン胚を2頭の仮親に移植した結果、そのうち1頭から2頭の産子が得られた。マイクロサテライトDNAマーカーを用いて解析した結果、これらの産子が核移植に用いた体細胞と同一の遺伝子型を持つクローン動物であることが確認された。 以上の結果から、卵子およびクローン胚のいずれにおいても、超音波のduty比は活性化後の発生にとって重要な要因であることが示された。また卵子とクローン胚では活性化に最適なduty比が異なることが示唆された。さらに、超音波により活性化されたミニブタ体細胞クローン胚は、産子にまで発生し得ることが証明された。
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