研究課題
平成17年度までに、マウスに導入したヒト・βグロビン遺伝子座(HS1/λ)において、LCRエンハンサーとεグロビン遺伝子間の距離(本来は5.6kb)をλDNA(約2.3kb)の挿入により大きくすることで、その転写が10%以下に低下することを示した。平成18年度は、(1)この表現型が、λDNA断片の挿入によりε遺伝子特異的なエンハンサーを破壊したことによるのではないことを証明し、また、(2)ε遺伝子がエンハンサーとの距離に対して感受性を持つ分子メカニズムを解明する、ことを研究の目的とした。上記の目的を達成するために、(1)LCRとε遺伝子間の、前回とは異なる位置にλDNAを挿入してトランスジエニック・マウスを作製(ε/λ)した。同マウスにおいてもε遺伝子発現の著しい低下が認められたことから、εグロビン遺伝子のLCRエンハンサーに対する距離感受性がさらに確かなものとなった。(2)次に、LCRに対する距離感受性を(少なくともdefinitive stageにおいては)持たないβ遺伝子プロモーターの配列を模倣し、変異型εプロモーター(Bepsi)を作製した。同変異と"HS1/λ"とを組み合わせてトランスジェニック・マウスを作製(HS1/λ/Bepsi)し、同遺伝子の発現解析を行った。その結果、BepsiプロモーターはLCRに対する距離感受性を持たないことがわかった。さらに、同トランスジェニック・マウスの内在の転写因子(EKLF)を破壊したところ、Bepsiプロモーターといえども、距離感受性となることがわかった。以上の結果から、本来エンハンサーの近位に存在するε遺伝子は距離感受性があり、遠位に存在するβ遺伝子は距離感受性がないこと。この違いは転写因子EKLFにより規定されることが明らかとなった。
すべて 2006
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PloS ONE 1・1
ページ: e46