研究概要 |
本年度は、昨年に引き続きナノスペシエーションを実施するためのハイフネーテッドテクニック、すなわちキャピラリー高速液体クロマトグラフィー(cap.HPLC)および誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)の構築を実施した。特に感度の向上と類金属元素(本研究ではセレン)と典型元素(本研究では硫黄)の同時分析を可能とする装置や操作条件の構築に主眼を置いた。 その結果、セレン分析においてより高感度かつ精密に分析を実施する手法として、重水素コリジョン法を開発し、原著論文として報告した(Y.Ogra, K.Ishiwata and K.T.Suzuki : Anal.Chim.Acta 554, 123-129, 2005)。本法はセレンを高感度に測定するために開発されたコリジョン法の欠点を克服した方法で、他では得られないユニークな分析結果を得ることができる。 また類金属元素および典型元素の同時分析においても、最適化した実験条件を構築し、応用可能な実用例を示した(Y.Ogra, K.Ishiwata, Y.Iwashita and K.T.Suzuki : J.Chromatogr.A 1093, 118-125, 2005)。本成果によって、セレン蓄積性の植物における硫黄代謝とセレン代謝の相違点の一部を解明した。 今年度開発した2つの独自技術は、研究代表者が開発しているナノスペシエーションの基幹技術として今後も利用する。さらに最終年度に向けて、2次元cap.HPLCの構築とICP-MSとの組み合わせ、また応用例として分子生物学的研究との融合を図った研究を展開する。
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