研究概要 |
本年度は、昨年に引き続きナノスペシエーションを実施するためのハイフネーテッドテクニック、すなわちキャピラリー高速液体クロマトグラフィー(capillary HPLC)および誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)の構築を実施した。その結果、2次元分離を可能としたcapillary HPLCとICP-MSとを組み合わせた分析系の構築に成功した。またこの手法を応用して、遺伝子改変細胞中の金属結合タンパク質のスペシエーション分析に成功した。本成果は、分子生物学的手法とスペシエーション分析を融合させた研究手法に関する世界初の報告である。本法では僅か2,000個の培養細胞があれば分析可能であることを示しており、非常に波及効果の高い成果であると確信している。 一方、スペシエーション分析を用いた毒性学的研究も実施し、相変化型DVDディスク(DVD-RAMやDVD-RW)の中心素材として含まれるテルルの毒性発現・代謝機構について、尿中代謝物を同定するなど新たな知見を報告した。 さらに、昨年度より継続していたセレン蓄積性植物に関する研究においては、新種のセレン蓄積性植物中のセレン代謝物の同定を試みたところ、全く新しいセレン化合物すなわちセレノホモランチオニンの同定に至った。本化合物は今後栄養補助食品などの創薬シード化合物になることが期待できるため、特許出願を行った。また植物におけるセレンの代謝機構の解明を通じて、セレンやテルルを標識物質としてタンパク質の標識を行う新規手法を確立した。現在、投稿準備中である。
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