自己免疫疾患は多遺伝子疾患であるため、一つの遺伝子に注目するのではなく、複数の遺伝子による協調的な制御機構を解明することが必須である。最近我々は、免疫抑制受容体PD-1を欠損させたマウスが、マウスの遺伝背景により様々な種類の自己免疫疾患を発症することを見出した。そこで免疫制御に関与する分子を欠損させたマウスにPD-1欠損を導入することにより、各免疫制御分子の自己免疫疾患発症制御における役割を増強し、効果的に解析できると予測した。 抗体のFc部分に結合する抑制性受容体FcγRIIBとPD-1の二重欠損マウスを作成したところ、約30%のマウスが両側性の水腎症を発症した。水腎症を発症したマウスでは腎盂から尿管、膀胱にかけて激しい炎症を認めた。また、水腎症を発症したマウスの血清中には尿路上皮に対する自己抗体が検出された。そこで自己抗原の同定を試みたところ、自己抗原の分子量と組織特異性から、尿路上皮の進展性に必須の分子であるUroplakinIIIaが自己抗原の1つとして同定された。FcγRIIB・PD-1二重欠損マウスでは水腎症の他に抗壁細胞抗体の産生を伴う胃炎と、抗核抗体の産生が認められた。胃炎の発症はPD-1欠損単独でもみられ、FcγRIIBとの二重欠損で有為な差はみられなかったが、水腎症と胃炎の発症はFcγRIIB欠損にPD-1の機能不全が合わさった時に初めて認められた。これらのことから、ある種の自己免疫疾患ではPD-1とFcγRIIBが協調的に発症を制御していることが示唆された。 複数遺伝子による自己免疫疾患制御機構を解明する上で、PD-1そのものの機能をより詳細に解析することは重要である。自己寛容成立・維持におけるPD-1の機能を解析し、PD-1がCTLA-4と協調してCD8陽性T細胞の自己寛容成立に必須の役割を果たしていることを解明し、論文報告した(研究発表-1)。
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