研究概要 |
本研究では、胎盤における薬物輸送担体の発現並びに機能の解析を行い、それらの薬物の経胎盤移行における役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、カチオン性薬物の輸送を担うorganic cation transporters(OCTs)のサブファミリーの中で、唯一胎盤に発現しているOCT3の機能特性について詳細な解析を継続し、その成果を論文に発表した。また、他の輸送担体として、OATPs(organic anion transporting polypeptides)の中で、胎盤に発現しているアイソフォームであるOATp-D,Eの機能を解析すべく、そのクローニング並びに安定発現系の構築を進めた(OATp-Bについてはすでに構築済)。また、胎盤に発現している排出輸送担体であるP-gpについて、遺伝子変異の影響も含めてその機能解析を行うために、野生型及び変異型(G2677T,G2677A,G325A)P-gpを昆虫由来Sf--9細胞に発現させ、その活性をArp加水分解活性及び膜小胞における輸送能として評価した。その結果、ATP加水分解活性により評価したP-gpの機能(親和性など)に、検討対象とした変異は顕著な影響を与えなかったことから、胎盤におけるP-gpを介した胎児防御能にそれら遺伝子多型の影響はないことが推察された。一方、膜小胞を用いた輸送実験については、トロホブラスト由来膜小胞と比較して、基質の輸送が小さく、Sf-9由来膜小胞はP-gpの機能を評価する系としては適切でない可能性が示された。また、現在同じく胎盤に発現している排出輸送担体であるBCRP(breast cancer resistance protein)についても解析に着手している。(738)
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