本邦ではHCVは1920年代に感染拡大が始まったと推定し、その社会的要因として1921年から地域限定で開始された日本住血吸虫症に対する駆虫剤の経静脈投与の可能性を報告し検討してきた。一方、世界において日本のHCV関連肝細胞癌(HCC)の頻度は極端に高く、その原因の一つとして感染時期の違いを考え、米国(1a)、日本(1b)、スペイン(1b)、旧ソ連(3a)、エジプト(4a)、南アフリカ(5a)、香港(6a)におけるHCV populationの推移を比較した。結果、大きく3つのグループに分かれ、グループI(日本;1920年より拡散)、グループII(ヨーロッパ、エジプト;1940年〜)、グループIII(米国、旧ソ連、南アフリカ、香港;1960年〜)に分類された。この拡散時期の違いは、HCV抗体陽性率とHCC死亡率の相関パターンに関連しており、HCV拡散時期を推定することで将来のHCC死亡率の予測も可能と考えられる。この研究成果はGastroenterology 2006に掲載された。 また、C型慢性肝炎に対するRibavirin単独療法が施行された症例のシリーズ検体を用いて、in vivoにおけるRibavirinのRNA mutagenとしての作用及びその遺伝子変異パターンを検討した。Ribavirin単独投与により、in vivoにおいてヌクレオチドアナログとして作用するだけでなくRNA Mutagenとしても作用する可能性が示唆され、昨年度日本肝臓学会総会にて発表を行った。こうしたウイルス遺伝子変異は、HCVに対する主要な治療法であるIFN+Ribavirin併用療法における治療効果にも影響を及ぼす可能性が考えられ検討したが、IFNとの併用ではRibavirinのRNA Mutagenとしての作用や治療効果への影響は明らかにできなかった。これらの結果は学会及び論文にても発表を行った。
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