研究概要 |
本課題では炎症性肺疾患の機構および治療標的分子解明の一環として,ヘアピンsiRNAベクターを用いて,分子ターゲッティングを行う.平成16年度はこれまでに,標的分子として,肺の異常な線維化に深く関与することが知られている,TGF-β_1に対して,ベクターの構築を行った.まず,ヘアピンsiRNAベクターの効果を評価するためにマウス由来の細胞株として,マウス肺腺腫細胞株LA-4,およびマウス肺線維芽細胞株3T12-3を用いて実験を開始した.TGF-β_1は両方の細胞株でRT-PCRでは発現が確認できるものの,ウェスタンブロットでは,検出限界以下であった。このため,TGF-β_1の前駆体(1173bp)を2つのユニットに分けて,RT-PCR,クローニングを行ったのち,前半・後半のユニットをライゲーション,変異のない全長をクローニングした.TGF-β_1のcDNAの全長をInvitrogen社の発現ベクターpcDNA3.1Zeoに組み込み,TGF-β_1の発現ベクターを構築した.上記細胞株にトランスフェクション,Zeocinでセレクションをすることにより,TGF-β_1の強制発現細胞のシステムを構築した.さらに,今回siRNAベクターを構築するに際して,オリゴの配列は,Ui-Teiらのルール[Ui-Tei et al., Nucleic Acids Research 32(3):936-48(2004)]に則り,標的配列を決定,また,ヘアピンのループについてはBrummelkampらの報告[Brummelkamp et al., Science 296(5567):550・3(2002)]に則りTTCAAGAGAの9塩基を用いた,このようにして構築したsiRNAベクターをTGF-β_1強制発現細胞にトランスフェクションしたところ,TGF-β_1の発現量はウェスタンブロット上50%前後まで低下した,さらにヘアピンsiRNAベクターにpuromycin耐性遺伝子を挿入し,TGF-β1強制発現細胞にトランスフェクト後,puromycinによる選択を行ったところ,2つの標的配列に対するヘアピンsiRNAベクターで10%前後にまでの発現の抑制が見られた.さらに,TGF-β1及びtetRを発現する細胞に,このヘアピンsiRNAベクターをトランスフェクト後ドキシサイクリンにより,ヘアピンsiRNAの転写誘導をかけたところ,10日目にはTGF-β_1の発現の低下が認められた.
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