研究概要 |
昨年度同定したマウスTGF-β_1に対する最も強力な発現抑制作用を示したヘアピンsiRNAをin vivoで用いるに際して,プロモータとヘアピン配列の間隔,ループ配列の最適化について検討を行った.この実験のために,新たにBspMIの制限酵素認識配列を持つヘアピンsiRNA発現ベクターU6pro/tetO/BspMIを構築した.BspMIは非パリンドロミックな認識配列の外側を切断する.この酵素を用いることで,プロモータの直後にヘアピン配列を挿入することが容易になる一方で,この酵素は切断効率が悪いことが知られている.申請者は以前PCRを用いたゲノムサブトラクション法であるMS-RDA法の改良に際し,GC含有量の高いDNAのPCR効率の改善にbetaineが有効であることを経験しており,U6pro/tetO/BspMIの切断に際してbetaineを加えたところ,切断効率の著明な改善を認めた.これらのbetaineの制限酵素処理に対する効果は日本学術振興財団ならびに文部科学省への謝辞とともに発表した. この様な制限酵素処理のブレイクスルーを経て,以前にその効果が明らかであるDNMT1に対する配列を用いて,2種類のヘアピンsiRNAベクターを構築し,その効果を検討した.その効果は明らかで,わずか数塩基がヘアピンsiRNAのタンパク発現抑制効果を減弱してしまうことが明らかになった.またヘアピン構造sense-loop-antisenseの中のloop配列については,DNMT3Aに対するsiRNAを用いて,その検討を行った.Brummelkampらの9塩基,申請者らの6塩基,Miyagishiらの11塩基について比較検討したところ,申請者らが以前用いたAatII配列が一番優れたタンパク発現抑制効果を示した.
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