Wiskott-Aldrich症候群(WAS)の原因遺伝子はWASPであり、患者でWASP蛋白質発現は低下しているが、WASP蛋白質分解の機序は不明である。本研究代表者は、WASP-Interacting Protein (WIP)ノックアウトマウス(-/-)T細胞においてWASP蛋白質発現が対照の10%以下に低下し、WAS患者のWASPミスセンス変異の90%以上がWIP結合領域に集中していることを発見した。本年度の研究により、1)WIP-/-におけるWASP蛋白質の発現低下を、当研究室で作製した抗WASPモノクローナル抗体によるフローサイトメトリー法により確認した。2)T細胞株へのWIP蛋白質の誘導発現系により、WASP蛋白質発現の増加を確認した。3)T細胞受容体シグナル伝達系におけるWASP分解の分子機構として、蛋白分解酵素Calpain及びUbiquitin-proteasome系特にCbl-bの関与をin vitro、in vivoの実験系にて明らかにした。4)T細胞受容体刺激後のWASP-WIP複合体の解離がWASP分解のtriggerになっていることを発見した。5)Calpain、proteasomeの特異的阻害剤によりWASP分解は阻害され、細胞骨格系において機能的な効果を発揮することを、アクチン重合化を指標として検討した。6)WIP結合領域にWASP変異をもつWAS患者検体を用いて、上記特異的阻害剤がWASP蛋白質発現を回復させ、アクチン重合化を機能的に回復させることを見出した。これらより、WIPによるWASP蛋白質の安定化の機構が大多数のWAS患者の分子病態の理解に不可欠であることを示した。この成果は、Immunityに投稿済であり、現在再投稿準備中である。 現在、常染色体遺伝性Type2-WASとしてのWIP欠損症のスクリーニングが進行中である。
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