2006年度現在、国内で唯一ホウ素中性子捕捉療法が行われている日本原子力研究開発機構にリアルタイム熱中性子モニタ(SOF検出器)を配備した。同時に複数箇所で測定が行えるようにするために、測定回路系の仕様変更を行い、同時に8箇所の熱中性子束測定が行えるシステムを完成させた。その結果、現在のところ、2箇所での同時測定を行い、1箇所は患者の動き等の影響を受けないコリメータ内側に配置、もう一箇所は患者表面へ貼り付けて測定を行うことが可能となった。臨床において実際の症例に対して計30回以上のリアルタイム熱中性子束計測を行い、従来の熱中性子束評価法と比較してほぼ同等の計測値が取得でき、SOF検出器の有効性を確認した。 また、治療計画装置JCDSで計算された線量分布・熱中性子束分布に、SOF検出器によるリアルタイム熱中性子束を反映させることによって、リアルタイムでの各種線量分布、中性子束分布を3次元で確認することが出来るソフトウェアを開発した。開発したソフトウェアでは、患者の体輪郭構造が分かるように、CT画像データ上に線量分布・中性子束分布を重ね合わせて表示できるように工夫を施した。これらの分布は、SOF検出器による測定値に連動して、1秒単位で更新されるため、リアルタイムでの線量分布評価が可能となった。したがって、患者のあらゆる箇所における線量を照射中に確認することが出来るため、過剰線量および線量不足を視覚的に確認することが可能となり、結果として、より高度な吸収線量制御が可能となった。しかしながら、本システムでは、JCDSによる線量計算結果が前提となっているため、患者セットアップの誤差などについて、今後の検討が必要であると思われる。
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