研究概要 |
L1CAM遺伝子異常を有するヒト神経幹細胞(XLH-hNSPC)の生物学的特性解析として、今年度はXLH-hNSPCとコントロールとして3ロットの正常ヒト神経幹細胞(hNSPC)を使用して、両細胞間での遺伝子発現プロファイルの比較解析をマイクロアレーを用いて実施した。 1)解析方法 Neurosphere法で培養したXLH-hNSPCおよび正常hNSPC(3ロット)のそれぞれから全RNAを抽出した。マイクロアレー(Affymetrix's HG-Focus GeneChip)を用いて、約8400種類のヒト既知遺伝子の発現を包括的に解析した。遺伝子発現パターンは定量的RT-PCR法を用いて検証した。 2)結果 解析した8400遺伝子の中で、hNSPCと比較してXLH-hNSPCで発現が有意に上昇していたものが248遺伝子(全体の約2.95%)、低下していたものが199遺伝子(約2.37%)で、合計447遺伝子(約5.32%)がhNSPCと間に遺伝子発現傾向の相違が見られた。それらの中でも特に細胞接着関連分子を中心に解析を進めたが、hNSPCと比較してXLH-hNSPCでは、integrin beta 5,laminin gamma1,neuropilin 1,ankyrin 2などの発現が低下しており、逆にNRCAM, NCAM1などの発現が上昇していることが確認された。 3)考察、今後の方針 XLH-hNSPCでは正常L1CAMの発現が喪失しており、細胞増殖能、接着能に異常が生じていることが確認されている。これら細胞特性の障害と今回確認された遺伝子異常との関連性を今後詳細に検討していく予定である。
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