本年は、著書1本、学術論文誌3本の出版、国際会議論文1本の出版の成果を得た。 著書「計算モデル論入門」はメタプログラミングシステムの基礎となる計算のための基礎理論を解説した入門書である。 論文誌コンピュータソフトウェアVol.23で出版された論文「高階書換え系の停止性のための代数モデル」は、長く未解決だった高階書換えの体系コンビナトリー簡約系の完全な代数モデルを与えた。メタプログラミングシステムのための計算体系としてメタ書換えの完全な代数的な特徴付けを得た。 論文誌Higher-Order and Symbolic Computationで出版された論文「Explicit Substitutions and Higher-Order Syntax」はメタプログラミングシステムに有用な構文的要素である明示的代入が、ある関手による始代数によって自然にモデル化できることを示した。また正しいモジュール化の解析のために高階抽象構文のモジュラー性の困難さを解析した。 論文誌Higher-Order and Symbolic Computationで出版されたもう一つの論文「An Initial Algebra Approach to Term Rewriting Systems with Variable Binders」は項書換え系のモナド意味論と高階構文の前層意味論を組み合わせるという新規な発想で、意味論的観点から新たにメタプログラミングシステムの基礎計算体系に有用な項書換え系に変数束縛を持つ体系を導出した。 国際会議Trends in Functional Programming(TFP 2006)で発表した「Representing Cyclic Structures as Nested Datatypes」は、サイクルを持つデータ構造を操作可能にする新しいモデル化について提案した。同研究結果は日本ソフトウェア科学会第二十三会高橋奨励賞を受賞した。
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