平成16年度には第一に、XML型検査のための非バックトラックトップダウン方式のツリーオートマトン包含判定アルゴリズムの設計・実装・評価実験を行った。本方式は、既存のトップダウン方式を、無駄な計算を省くための「依存関係情報」を組み込んで改良したものである。これについて、型付きXML処理言語XDuceの型検査から得られるデータを入力として、評価実験を行った。その結果、多くの入力に関しては既存のアルゴリズムとほぼ同等な実行時間であったが、残りの入力に関しては2倍から5倍という大幅な改善が見られた。従って、既存の方式の代替として十分通用すると結論づけた。この研究結果は既に論文にまとめ、現在国際会議に投稿中である。 第二に、XML型検査で重要となる「多相型」の研究も行った。多相型は、同じプログラムコードを複数の場面で再利用することを可能にする重要な機能であるが、XML型検査で単純に導入すると計算量が爆発するため、本研究では計算量を抑えつつ、ユーザにとって納得のできる定義を与え、その数学的性質を証明した。この研究成果は既に国際会議で発表した。 第三に、XMLの一つの処理方式として双方向変換言語に関する研究を行った。双方向変換とは、一つのプログラムを書くと、順方向と逆方向の二つの変換プログラムを生成するシステムである。構造が異なるが用途が同じフォーマット間を相互に変換するために重要である。現在までに、変換言語を設計し基本的な実行方式を考案し、それを国内研究会で発表した。今後、この変換方式に関する型検査方式を研究して予定である。
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