平成17年度には、まず前年に続いてシャッフル表現という機能を含んだXMLの型検査を高速に行うためのアルゴリズムを開発した。BDDというモデル検査の分野で用いられる技法を用い、シャッフル表現を扱うために重要な「集合の集合」を高速でコンパクトに表現するアルゴリズムを考案し、現在現実的な設定での実験を準備するため、システムを実装中である。中間的な報告をプログラミング言語の研究会(PPL'06)にて口頭発表した。 第二に、単項二階述語論理(MSO)という体系を用いたXML処理言語の設計と実装を行った。MSOは、XPathなどの標準的なパターンマッチ機構に比べて遥かに凌駕する表現力を持ちながら、決定可能な枠組みである。この高速な実行のため、ツリーオートマトンに基づいた線形時間の評価アルゴリズムを考案し、実際の言語システムとして実現した。PPL'06にて査読付き論文として発表し、現在国際会議への投稿を準備中である。 第三に、二つの同目的の異なるXMLフォーマット間を相互に変換することのできる専用言語の設計・開発を、前年度の継続として進めた。今年度では、バックトラックのないワンパスの高速実行アルゴリズムを開発し、言語システムとして実現した。実際の応用例として、ContactXMLとvCard-XMLという異なる組織で制定されたフォーマット間の双方向変換を簡単に記述でき、少々大きなデータに対しても高速な処理をできることを示した。PPL'06にて口頭発表し、現在国際会議への投稿を準備中である。
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