研究概要 |
本研究の目的は,論理回路の素子数や段数の最適性が証明できる具体的関数を人工的に作成し,その関数を論理設計CADなどの自動設計システムの評価のために,テスト例題として役立てることである.従来のベンチマーク集合という固定されたテスト例題を用いる手法とは異なった評価システムを作ることが課題である.平成17年度は,素子数や段数,計算時間やメモリ量に基づく計算量クラスの階層定理を理論的に証明した.計算量クラスを分離する具体的関数は,本質的に計算が難しい関数であり,システムの性能評価に適しているといえる.具体的には,次の結果を得た. 1.代表的な理論計算機モデルであるPRAMとATMについて,定数係数まで厳密化した階層定理を導出した.この定理は,チューリング機械に対して構築された移行補題という証明技術をPRAMとATMに適用し,疎な階層を稠密化することにより導出した.この結果は,国際シンポジウム(The 15th International Symposium on Fundamentals of Computation Theory)にて公表した. 2.対数時間一様論理回路族の階層定理に関しては,平成16年度に階層定理を得ており,国際会議にて報告済みであるが,この結果をより拡張し,一般化した定理を得た.一般化した定理と上記1の結果を一つの論文にまとめ,ジャーナル版として,ドイツの学術雑誌(Fandamenta Informaticae)に論文を投稿中である.
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