研究概要 |
本年度の主な研究成果は以下のとおりである, (1)高速な浮動小数点演算を用いた高精度な計算法の考案 (2)区間行列乗算の高速化 (3)大規模連立一次方程式のための高速精度保証法の開発 (1)に関して,IEEE754浮動小数点規格に従うハードウェア上で実行可能な高速かつ高精度な内積計算アルゴリズムを開発した.これは特定のハードウェアに依存しないため多くの現行の計算機に適用可能である.また,内積計算は科学技術計算の基礎のひとつであり,線形問題の広い範囲に応用できる.これを研究成果として論文にまとめ,その結果,応用数学に関する国際的な論文誌であるSIAM Journal on Scientific Computingに採録決定となった. (2)に関して,線形問題の精度保証付き計算では要素が区間であるような行列の積が頻繁に現れることから,その高速化について考察した.これは近年,OishiとRumpによって考案された丸めモードの制御を巧妙に利用した演算方式をさらに高速化したもので,丸めモード制御演算方式を用いるど区間行列同士の積は点行列同士の積の約4倍のコストで計算できたが,これをさらに約2倍のコストにまで抑えることができることを示した.これを研究成果として論文にまとめ,その結果精度保証付き数値計算に関する代表的な論文誌であるReliable Computingに採録された. (3)に関して,大規模で密な係数行列を持つ連立一次方程式の数値解に対する精度保証法を開発した.近年,OishiとRumpによって考案された精度保証法は,数値解を得る手間と同等のコストで実行できるが,それが失敗したときにその結果を再利用してロバストかつ高速(約4倍のコスト)に精度保証ができることを示した.これは情報処理学会論文誌「数理モデル化とその応用」に採録された.
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