現在、電子データの不正コピー対策としてデータ以外の別の情報を埋め込む「電子透かし技術」が盛んに研究されている。電子透かし技術を不正コピー対処のために用いる場合、データ送信時にデータ受信者情報を透かし情報として埋め込む。そして不正コピーが流出し、それがそのデータ送信者に発見されたとき、埋め込まれている透かし情報を読み取ることで、流出元が特定できる。このとき単純なビット列等を埋め込んでしまった場合、不正者が複数結託することで埋め込んだ透かし情報を破壊される危険性がある。本研究では上述のような結託による改変、およびさらなるランダムな改変に対しても耐性を持つ電子透かし情報符号化法に関する研究を行う。今年度は、これまでに提案した符号化法であるRandomized c-Secure CRT符号、およびその復号法、すなわち不正コピー行為者検出法に対する最強の攻撃法とは何か、について考察を行った。さらにこの攻撃に対する符号化法、復号法の安全性を詳細に解析した。この解析は計算機を用いたシミュレーションを行うことにより行った。シミュレーションで信頼性の高い結果を得るためには、最低でも数百万回レベルの試行が必要であったため、本補助金で購入した高性能な計算機が不可欠であった。さらにこれまでに提案されてきた他の同目的符号化法、復号法と、現実的な使用環境を想定して設定したパラメータにおける攻撃耐性の比較を行った。本比較は解析的比較、シミュレーションによる比較の両面から行った。その結果、Randomized c-Secure CRT符号がより実用性を持つこと、さらなる符号長削減可能性があることを確認できた。
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