我々の既存研究によって、あるクラスの問題に対して機械的に効率の良いプログラムが仕様から導出されることを明らかにされたが、今年度は、これまで対象としていた問題クラスを拡張し、より広い範囲でプログラム変換が行えるような変換の枠組みを考察した。これはある問題クラスのパラメータの一つに関する制限を緩めたものであり、これにより扱える問題クラスが広がり、また仕様記述もより容易になった。この拡張の核となる変換定理は、拡張前と同様、得られるプログラムの計算量が入力データのサイズに関して線形であることが保障されており、有用である。ただし、計算量の定数係数が問題によっては大きくなることがあり、これに関する改善について検討した。本研究の対象としている問題は組み合わせ最適化問題であり、オートマトンが深く関係しているので、一般の定数係数の問題の解決法としてオートマトンの圧縮があるが、対象としている問題クラスに対してどのように適用されるべきか考察を行った。また、導出されるアルゴリズムは動的計画法のアルゴリズムになっており、計算の各ステップにおいていくつかの候補解を保持するものであるが、導出によって得られるアルゴリズムでは、不要な候補解が大半を占めることがあり、その場合、無駄な計算が多くなる。一般に、無駄な計算を省く手法の一つとして遅延評価が挙げられ、対象問題に有効に適用される可能性があるか検討した。これらの考察の結果得られた変換定理、変換の枠組みに関して、国際会議International Colloquium on Theoretical Aspects of Computing (ICTAC2005、査読付き)にて発表、研究討論を行った。
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