研究概要 |
本研究ではオブジェクト指向ソフトウェアを対象とし,そのバージョンアップに伴う変更量に関して予測判別モデルの検討を行った.ここでいう予測判別とは,ソフトウェアのバージョンアップにおいて,その変更量が「特に多いもの」となるか否かを事前に予測することをさす.予測の材料には,ソフトウェア特性に対する定量的尺度(メトリクス)による測定値を使用した. これまでにソフトウェアのサイズに関するメトリクスStmts(プログラム中での「実行文と宣言文の数」)を用いた予測判別モデルを提案していたが,これについてのデータ収集を継続して実施し,そのモデルの有効性を実験によって確認した:Javaプログラムの場合,Stmts値が120程度(行数にして250〜400行程度)より大きなクラスにおいて,バージョンアップに伴う変更量が特に多くなる傾向にあることを示した.この成果を2004年8月にロシア連邦モスクワ市で開催された国際会議で発表し,有益なコメントと知見を得ることができた.その後,発表論文に加筆・修正を行って学術雑誌へ投稿し,採録された(2005年6月に掲載予定). また,提案モデルにおける予測判別精度の向上を目指し,多変量モデルへの拡張を試みた.これは,複数のメトリクスによる測定値を材料とし,それらを用いてソフトウェア変更量が特に大きくなりそうなものとそうでないものとを予測判別するモデルである.このモデルはマハラノビス距離による判別分析モデルの一種である.現在,このモデルに関してデータ収集並びに分析を行っているが,これまでの単一メトリクスによる予測判別モデルよりも高い予測精度が期待される.この内容の一部について,2004年9月に徳島市で開催された学会並びに2004年11月に三重県磯部町で開催されたワークショップで発表し,有益なコメントを得ることができた.
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